1月から2月上旬にかけて、金星は南南西から南西へと高度をほぼ一定に保ちつつじわじわと光度を上げていった。こうした位置の変化に、形がどう変化したかを重ねるには、生徒たち自身に望遠鏡を覗いてもらい金星を観察してもらうのが一番だ。日曜日ごとに晴れの日を待ち、ようやく中学生による金星観察が実現したのは2月10日過ぎになってからであった。 この日、金星は、月齢5日ごろの月のように欠けて見えるはずであった。まず、生徒たちにもうすぐ届けられる手配になっている双眼鏡と同じタイプのものを渡し、金星の形を観察してもらった。見にくかったが、金星が欠けていることをなんとか確認できた生徒もいた。なんとか行けそうだ。 引き続いて望遠鏡による金星観察のため、天体望遠鏡ドームに入った。まず、ドームの窓を西へ向ける。モーターのスイッチを押すと、ゴーという音とともにドームが回転する。生徒たちはドームの回転音に驚きつつも、初めて覗く星空の世界に胸をときめかせる。4人とも天体望遠鏡を覗くのは初めてなのだ。 天体望遠鏡の仕組みと赤道儀の説明が終わり、大きな期待感を抱いてアイピースを覗き込む。 「すごーい。欠けて見える!」 と一人の生徒。続いて、 「ほんとだ。けっこう大きく欠けているんですね」 みんな、自分達がこれまで位置を観察してきた金星が大きく欠けていることに驚いた様子だ。 金星の観察に満足し、続いて望遠鏡を木星へ向ける。 「あ、縞が見える。衛星もみえる」 「ガリレオ衛星だね」 「すごーい」 と歓声があがる。続いて土星。 「わーきれい。輪がくっきりみえるよ」 「天体望遠鏡って、すごいんですね」 初めての天体望遠鏡観察に生徒たちは、たいへん興奮し、満足したようだった。 「こうした感動を、クラス全員で味わえるといいんだがなあ」 「とにかく注文した双眼鏡がもうすぐ来るから。それで試してみませんか」 生徒たちはたいへん満足したようで、これまで地道に行ってきた金星の観察を継続していくことへの大きな動機づけとしては充分であったようだった。 |
[はじめに] | |
[1.金星の満ち欠けを観察しよう] | |
[2.双眼鏡を使ってみませんか] | |
⇒ | [3.天体望遠鏡はすごい!] |
[4.指導計画] | |
[5.双眼鏡とにぎりこぶし法でチャレンジ] | |
[6.天体望遠鏡の組み立てキットがあった] | |
[7.天体望遠鏡を作る] | |
[8.やせ細った金星] | |
[9.まとめの授業] | |
[10.生徒の反応] | |
[11.授業をおえて] | |
[おわりに] |