ヒマラヤの隆起

緯経度
北緯 27°59′ (+27.98°)
東経 86°56′ (+86.93°)
, エヴェレスト山

ヒマラヤ隆起 (4000万年前)

高度8000メートル級のヒマラヤの山頂付近からアンモナイトの化石が出るということは、そこがかつて海の底だったことを物語っています。プレートの移動により南から流れてきたインド亜大陸が衝突した衝撃で、海底面が隆起してこの‘世界の屋根’ができました。
この屏風のような山塊の出現により、風の流れがかわり、東南アジアから日本まで湿り気を乗せて吹きわたる‘モンスーン’が誕生し,湿潤アジア独特の文化を育む一方、屏風の裏側のチベット高原やシルクロードは広い範囲にわたって寒冷な乾燥地帯となりました。
地球内部の運動 (プレート・テクトニクス) による地殻変動と山脈の誕生は、このように地球規模の気候変動をもたらすのです。
世界最高峰のあるヒマラヤ山脈。大地の変動は今でも続いています。それは大陸と大陸の衝突が原因です。ヒマラヤ山脈は,インド大陸がプレートの運動により北上してアジアと衝突してできた造山山脈なのです。
[小嶋智, 岐阜大学工学部]
約2億5000万年前、世界中の大陸は1つに集まり、超大陸を形成しました。大陸移動説を唱えたウェーゲナーは,この大陸を ‘パンゲア’ と名づけました。インドもこの大陸の一部でしたが、オーストラリアやアフリカとともに分離し、北上しました。
[Skinner, B.J.; Porter, S.C. The dynamic earth: an introduction to physical geology. 4th ed. New York, John Wiley & Sons, 2000, p. 459]
約4000万年前になると、インド大陸はアジアと衝突しました。硬いインド大陸はアジアに突き刺さるように衝突し、ヒマラヤ山脈やチベット高原の隆起を引き起こしました。
[右: Thompson; Turk. Earth Science and the Evolution. 2nd ed. Orlando, Harcourt Brace & Company, 1999]
インドの衝突によって、東南アジアや中国は東へ押し出されるように変形しました。また、衝突帯の周辺には多数の活断層が形成されました。この地域では、活断層の活動による巨大地震による被害が繰り返されています。
隆起するヒマラヤ山脈は、河川に侵食されています。その結果、大量の土砂がインド洋に運ばれ,海底に堆積盆地が形成されました。陸上に残る土石流堆積物も,侵食の激しさを物語ります。大地は侵食され,風化していきます。大陸から運ばれたカルシウム・イオンは,海洋で炭酸イオンと結合して炭酸塩岩を形成します。ヒマラヤ山脈の隆起が侵食作用を活発化させ、ひいては大気中の二酸化炭素濃度を下げて、気候を寒冷化させました。
[小嶋智, 岐阜大学工学部]
ヒマラヤ山脈の隆起は、大気大循環にも大きな影響を与えました。ヒマラヤ山脈やチベット高原が,大気の流れの障壁となって、ジェット気流が大きく蛇行しました。また、アジア・モンスーンも激しさを増し、アジア地域だけでなく,広く地球の気候を大きく変化させた。地球内部の運動がもたらすプレート運動は、大気の循環や気候の変動とも密接に関わっているのです。