隕石

緯経度
南緯 36°36′ (-36.60°)
東経 145°12′ (+145.20°)

マーチソン

隕石から「地球誕生」を読む (46億年前; 0歳)

誕生まもない原始地球のようすを知る手がかりは、実は地球には残されていません。何十億年にわたる地殻変動や侵食の結果、地表面には40億年より以前の記録は存在しないのです。そのかわり,地球外からの隕石や、月で採取された石などが、地球誕生の物語を開示する貴重なレコードとなります。この頃は、絶えざる微惑星の衝突で表面は月のようにクレーターだらけで、沢山のマグマの海が生まれていたと考えられます。月も地球のすぐ近く (地球の直径のほんの2倍くらいの距離。ちなみに現在は約30倍の距離) にあり、その引力の影響で地球全体が常に大きく変動していたに違いありません。
生まれたばかりの地球は、一体どんな世界だったのでしょうか ?
1969年9月28日午前11時,オーストラリア・メルボルン北170kmの町マーチソンの近くに巨大な火球が落下しました。地球大気へと突っ込んだ天体は大気中でバラバラになり,広い範囲に飛び散りました。回収された隕石はタイプIIの炭素質隕石で、マーチソン隕石と名づけられました。
[画像提供 : 生命の海科学館]
マーチソン隕石には揮発性成分が多量に含まれていて、有機物の分析が試みられました。その結果、グリシン、アラニンなどのアミノ酸が見つかりました。この図は、有機物の分析データです。この発見は,地球以外の場所でも有機物が存在することを明らかにしました。
[画像提供 : 生命の海科学館, Source: Prof. Kluiber]
46億年前,生まれたばかりの太陽を円盤状のガスと塵がとり巻いていました。原始太陽系星雲です。原始太陽系星雲のガスが冷却するにつれて、金属、鉱物、氷などの固体微粒子が生まれ,それらの微粒子が集まって微惑星ができました。隕石は微惑星の名残りで、地球などの惑星を作るはずだった材料物質なのです。
[画像提供 : 生命の海科学館, Produced by: Dentsu Tec Inc. & Fujitsu Corp]
原始太陽系星雲でできた微惑星は,鉄‐ニッケル合金、岩石、氷でできていました。微惑星は衝突による破壊と合体を繰り返し、その中で大きく成長したものが惑星へと成長しました。壊れた破片は宇宙空間をさまよって、希に惑星に落下します。これまでに地球に落下した隕石は、鉄隕石、石質隕石、石鉄隕石に分けられます。(石鉄隕石は金属鉄と岩石が混ざった隕石です)
[画像提供 : 生命の海科学館]
固体微粒子が集まってできた隕石がコンドライトです。コンドライトにはコンドルールという直径数百μmの球粒が多数含まれていて,それを粘土鉱物からなる基質がとりまいています。マーチソン隕石では,基質に水や有機物などの揮発性成分が含まれています。
[画像提供 : 生命の海科学館]
マーチソン隕石が落下した1969年、メキシコの町・アイェンデに,大きな炭素質隕石が落下しました。この隕石には白っぽい色をした粒子が多数含まれていました。
[画像提供 : 生命の海科学館]
分析の結果、白っぽい粒子にはカルシウムやアルミニウムが多く含まれていました。粒子の組成は高温のガスから最初に凝縮する固体微粒子によく似ていて、原始太陽系星雲で起こったガスから塵の形成の様子をさぐる重要な手がかりになりました。
[画像提供 : 生命の海科学館]
隕石には,コンドライトのほかに,玄武岩とよく似たものもあります。その中には月や火星からやってきた隕石もあります。隕石は,惑星をつくっている物質を研究し太陽系の起源や歴史を解明するうえで、貴重な試料なのです。
[photo by NASA]