エル・ニーニョと世界経済
1960年代まで、エル・ニーニョ現象は、ペルー周辺の人々と、一部の気象学者、海洋学者に知られていたにすぎなかった。1972年から翌年に発生したエル・ニーニョによって、エル・ニーニョ現象は、世界的にそして専門家以外の人々にも注目されるようになった。ペルー沖の海水温が上昇して、プランクトンが死滅した結果、ペルー沖でのイワシの収穫が著しく落ち込んだのである。ペルー産のイワシはアメリカ合衆国に輸出され、大豆などの農作物の生産における飼料として使われていたのである。イワシの不漁は、大豆生産の落ち込みを引き起こし、国際市場における大豆の高騰をまねいた。その原因として始めてエル・ニーニョ現象が注目されたわけである。こんにちでは、エル・ニーニョ現象は、世界各地の異常気象の要因として、多くの人々の関心を集めるようになっている。
文献
Lehodey, P; Bertignac, M; Hampton, J; Lewis, A; Picaut J. 1997. El Niño‐Southern Oscillation and tuna in the western Pacific. Nature, 389, 715–718. [abstract]
Linsley, BK; Wellington, GM; Schrag, DP. 2000. Decadal sea surface temperature variability in the subtropical South Pacific from 1726 to 1997 AD. Science, 290, 1145–1148.