クレーター形態学
地球は水惑星である。地表や海洋で蒸発した水は雨となって地表を流れる。水の流れは地表を侵食していく。衝突によってできたクレーターも長い年月の間に風化や侵食を受ける。また、火山活動や地殻変動、造山運動によっても形態が改変されてしまう。現在地球に分布する衝突構造は円形の窪地や湖になっていることが多い。
一方、月や惑星のクレーターには比較的新しい地質時代に形成されたものがたくさんある。これらのクレーターの形態を調べると大きさによって特徴が異なっていることがわかる。ここでは典型的な円形構造のクレーターの形態についてまず紹介し、そのあとで斜め衝突でできたクレーターや、火星や木星、土星の氷衛星、金星のクレーターの形態について述べることにしよう。
丸底クレーター
これはボウル状あるいはおわん状の形態をした単純なクレーターである。比較的小さいクレーターに多い。
平底を持つクレーター
これはクレーターの底面が平坦なクレーターである。月や惑星の地殻構造に成層構造がある場合、表層の岩石が飛び散って第二層の表面がクレーターの底を形成してできると考えられている。
地滑り構造をもつクレーター
中央丘を持つクレーター
これはクレーターの中央部に突起状の地形が形成されているものである。月面では直径10 km以上のクレーターに多い。
ピーク・リング・クレーター
これはクレーターの内部にもう1つ小規模のリング状の突起をともなうもので、ふつうの中央丘をもつクレーターより大きいクレーターに多い。
多重リング・クレーター
これはクレーターの内部に複数のリングをもつクレーターで、直径1000 km以上のものがある。月面のオリエンタル盆地、水星のカロリス盆地、木星の衛星カリストのバルハラ盆地などが知られている。
斜め衝突クレーター
月面には斜め衝突によってできたとされる非軸対象の形状をしたクレーターや放出物が軸対象からずれたものがある。このようなクレーターは火星でも多数みつかっている。
氷衛星のクレーター
地球のクレーター
地球のクレーターはテクトニックな変形を受けたり、侵食によって削られてできた。一見しただけでは衝突でできたかどうかわからないクレーターもみつかっている。