クレーター形態学

地球は水惑星である。地表や海洋で蒸発した水は雨となって地表を流れる。水の流れは地表を侵食していく。衝突によってできたクレーターも長い年月の間に風化や侵食を受ける。また、火山活動や地殻変動、造山運動によっても形態が改変されてしまう。現在地球に分布する衝突構造は円形の窪地や湖になっていることが多い。
一方、月や惑星のクレーターには比較的新しい地質時代に形成されたものがたくさんある。これらのクレーターの形態を調べると大きさによって特徴が異なっていることがわかる。ここでは典型的な円形構造のクレーターの形態についてまず紹介し、そのあとで斜め衝突でできたクレーターや、火星や木星、土星の氷衛星、金星のクレーターの形態について述べることにしよう。
月の、無名のクレーター。直径4 km。ズーム
月の、無名のクレーター。直径4 km。

丸底クレーター

これはボウル状あるいはおわん状の形態をした単純なクレーターである。比較的小さいクレーターに多い。
月の、ベッセル・クレーター。直径17 km。ズーム
月の、ベッセル・クレーター。直径17 km。

平底を持つクレーター

これはクレーターの底面が平坦なクレーターである。月や惑星の地殻構造に成層構造がある場合、表層の岩石が飛び散って第二層の表面がクレーターの底を形成してできると考えられている。
月の裏側の、ツィオルコフスキー・クレーター北西麓。右下隅の暗い円盤がクレーター本体で、直径185 km。ズーム
月の裏側の、ツィオルコフスキー・クレーター北西麓。右下隅の暗い円盤がクレーター本体で、直径185 km。
リングから外側(↖)に向かって、地滑りの痕が見られる。
地滑りの距離は、最大50 kmに及ぶ。

地滑り構造をもつクレーター

月の、オイラ-・クレーター。直径27 km。ズーム
月の、オイラ-・クレーター。直径27 km。

中央丘を持つクレーター

これはクレーターの中央部に突起状の地形が形成されているものである。月面では直径10 km以上のクレーターに多い。
月の裏側の、キング・クレーター。直径75 km、深さ4 km。ズーム
月の裏側の、キング・クレーター。直径75 km、深さ4 km。

ピーク・リング・クレーター

これはクレーターの内部にもう1つ小規模のリング状の突起をともなうもので、ふつうの中央丘をもつクレーターより大きいクレーターに多い。
月の、東の海。最も内側のリングは直径327 km。ズーム
月の、東の海。最も内側のリングは直径327 km。

多重リング・クレーター

これはクレーターの内部に複数のリングをもつクレーターで、直径1000 km以上のものがある。月面のオリエンタル盆地、水星のカロリス盆地、木星の衛星カリストのバルハラ盆地などが知られている。
月の、無名のクレーター。直径2 km。ズーム
月の、無名のクレーター。直径2 km。
南(↑)から北(下)への斜め衝突によって生まれた。

斜め衝突クレーター

月面には斜め衝突によってできたとされる非軸対象の形状をしたクレーターや放出物が軸対象からずれたものがある。このようなクレーターは火星でも多数みつかっている。
木星第4衛星カリストの、ハル・クレーター。ズーム
木星第4衛星カリストの、ハル・クレーター。
中央に、円形の丘がある。
衝突後に、溶けた氷(水)が湧き上がってできた。

氷衛星のクレーター

地球の、アクラマン・クレーター。ズーム
地球の、アクラマン・クレーター。

地球のクレーター

地球のクレーターはテクトニックな変形を受けたり、侵食によって削られてできた。一見しただけでは衝突でできたかどうかわからないクレーターもみつかっている。