ユカタン半島での発見

天体衝突によって恐竜が絶滅したとする仮説が提示されるとすぐに、研究者たちは恐竜殺戮を促した衝突跡がどこかに残されていないか探しまわった。それから約10年後、アリゾナ大学のアラン・ヒルデブランド博士らは、カリブ地域のハイチで厚いK/T境界層があることを発見し、衝突がカリブ海周辺で起こったことを示唆した。彼らは、その成果を1990年、ヒューストンの月惑星科学会議で発表した。
この講演を聴いた地元ジャーナリストのC.ピアーズは、10年ほどまえにメキシコの石油掘削会社の地球物理学者ペンフィールド博士がカリブ海に面したユカタン半島にクレーター状の円形構造があることを学会で発表したことを思い出した。ペンフィールド博士はその発見を1981年に開催された学会で発表したが、たまたま同じ日程で別の地で恐竜絶滅の原因を巡る研究会が開催されており、彼の講演に目を向けた研究者はいなかった。いずれにしてもピアーズがとりもって、ペンフィールド博士の研究はヒルデブランド博士の研究が結びつき、恐竜を絶滅させた衝突の傷跡が発見されることになった。